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こころのたび Part8

 こんばんは、管理人でございます。昨日は体調不良のため、途中まで書いたところでギブしてしまいましたが、どうにか体調がある程度復活したので、今日から更新再開です。引き続き応援いただけると、幸いです。


 今回の更新は、こころのたびの第8話(第9回)。正直な話、今回の話で終わりでも良かったのですが、諸々考えるとそうもいかなくなったので、もう一話分続きます。ちなみに、こちらが完結した後にアップする予定の物は、現在鋭意執筆中でございます。おそらく、また二次創作ものになるかと思いますので、あまり期待しすぎないでお待ちください。それでは、参ります。↓
~エピローグ1

 それは、桜が飛び降りてから、およそ一週間後の話。桜が通う学校の校門前で、ぽつりと立っている人影が一つ。その正体はやはり桜である。

「う、う~ん……。やっぱ、ちょっとはずい、かも」

 校門前にて、桜はうんうんと唸り、門をくぐろうかくぐるまいかと、心の中で格闘していた。なぜそんな状況になっているのか、理由は実に簡単である。

「私がなんで落ちたのか、みんな知ってる……よね?しかも、松本先輩にも間違いなく知られてるし、考えるだけで憂鬱になってきた」

 そう呟く彼女の脳裏によみがえるのは、あの日音楽室で見た光景、それと歩道橋から身を乗り出して身体が浮かんだ瞬間のこと。数日前、病院のベッドで目を覚ました桜が真っ先に思い出したことでもある。

 実際のところは少し違うが、彼女の周りではその二つは関連付けられた状態で認識されていた。つまり、彼女には大した外傷はなかった。しかし、意識が中々戻らず、彼女の両親を始めとした関係者たちは意識が戻るのをただ待っていた。そして、事故から三日が過ぎた日の夜、彼女はようやく意識を取り戻した。その時、まるでうわ言のように語った話がある。それは、眠っている彼女が見た夢の話。

 夢の中の彼女は、幽霊となってこの町をさまよっており、そこに不思議な少女に出会った。少女は大きな鎌を携え、自らを死神と名乗った。しかし、その実少女はその名を冠するに相応しくないほどやさしく、またお節介だった。そして、少女は幽霊であるはずの桜に願った……一生懸命生きることを。

「でも、今思うと、あれは夢じゃなかったかもしれない。記憶もすでにおぼろげになってるけど、何か大切なことを教わった気がするから……」

 そんな中、桜の頭の中に声が響いた。彼女の方に聞き覚えはない、しかしどこか懐かしさを感じさせる、そんな声が。その声は、まるで彼女に囁きかけるかのように、言葉を投げかける。

『約束、忘れないでね』

 それを最後に、その声は聞こえなくなった。桜は軽く辺りを見回すが、同じ声はとうとう見つけられなかった。しかし、彼女にとってそれはもう重要ではない。なぜなら、メッセージを受け取ったということに意味があるのだから。

「ええい、ままよ!!」

 彼女は、半ばやけっぱちになりながら、一歩足を踏み出す。瞬間、彼女の取り巻く心の鎖が緩む。そして、緩んでいる内に一歩、また一歩と歩を進め、目的地へと向かっていく。


「おーい!みゆき、佐和子―!」

 目的地、もとい教室へ向かう最中、桜は教室の前で談笑している二人の姿を見つける。彼女が声をかけると、二人は桜の方を振り向き、驚きの表情を浮かべる。

「「桜!!」」

 二人の声は重なり、桜へと届いた。それを聞いて、桜は少し嬉しそうにほおを緩める。

「二人とも、おはよう!」

 二人の元に駆け寄ると、桜は挨拶をかわす。そんな桜の様子を見た二人は、驚きと心配、それと喜びの入り混じった表情で彼女を迎え入れた。

「もう、大丈夫なの?」

「うん。色々と心配をかけてごめん」

「そう。よかったぁ!」

 口々に心配の言葉をかける二人。桜は、そんな二人の言葉に対して、嬉しそうに返事をする。正真正銘、これは桜にとっての日常であり、会話を通して彼女はそれをゆっくりとかみしめる。しかし、その一方でどこか違和感があるのも事実だった。まるで、ある話題について意図的に避けているような、である。彼女が話題を切り出したのは、まさにそんなときである。

「そういえばさあ、佐和子髪の毛切ったよね?前のも良かったけど、今の髪形も似合ってるよ」

 言いながら、佐和子の髪の毛を見つめる桜。すると、佐和子は少し嬉しそうな表情を浮かべ、照れ笑いをする。

「うんうん。こないだも言ったけど、私もそう思うな。今度髪切るときは、同じ場所で切ってもらうつもりなんだ」

 桜の言葉に、みゆきも同調する。二人から持ち上げられて、佐和子は恥ずかしそうに顔を赤らめ、こう切り返す。

「も、もう~。褒めたって、その、何も出ないわよ」

「別にお世辞言ってるわけじゃないんだから、謙遜しないの。それに、佐和子見てたら、私も髪の毛切りたくなっちゃったし」

 桜がそう言った瞬間、みゆきと佐和子の表情が曇る。そして、それとほぼ同じタイミングで、三人の横を一組の生徒が通りすぎる。片方は、上背が高く、やや中性的な顔つきをした男子生徒、もう片方は、ちょっと小柄な体型で、美人と言うよりも可愛らしいという雰囲気の女子生徒。桜たち三人は、彼らの姿に覚えがあった。それどころか、男子生徒の方は面識さえあった。それは、あの日―桜が歩道橋から落ちた日―に、音楽室でキスをしていた松本と、名前も知らない女子生徒だった。

「桜……」

 不安そうな声で、佐和子は桜の名前を呼ぶ。すると、松本はようやく彼女たちのことに気付いたのか、彼女たちの方に顔を向ける。そして、その時の桜はと言うと、胸に手を当て、痛みを堪えるかのごとく、ほんの少し顔をゆがませる。しかし、それはほんの一瞬のことで、次の瞬間には無言で松本に向けて頭を下げていた。

「ねえ、松本君?今のって……」

 松本の隣を歩く女子生徒が、彼へと問いを投げかける。すると、それに気付いた松本はゆっくりと彼女へと視線を戻し、こう答えた。

「ああ、ごめん。何でもないんだ、行こう!」

 その言葉に納得したのか、彼女はそれ以上何も聞かなかった。そして、何事もなかったかのように会話を再開し、二人はその場を去っていった。

「ね、ねえ……今のって」

 二人が去った後、恐る恐る話を切り出したのはみゆき。ただ、明らかにばつが悪そうな表情を浮かべており、また佐和子も同様だった。そんな二人を交互に見ながら、桜はゆっくりと口を開く。

「二人とも、私は大丈夫だから。時間はかかるかもしれないけど、きっと吹っ切れる……と思う。だから、気分転換に髪形でも変えてみようかな、って」

 そう答える桜の表情は、少し痛々しい、だけどどこか清々しさが感じられる、そんな表情だった。


 午前中の授業が終わり、桜は一人学食へと向かう。佐和子とみゆきは基本的に弁当派なので、昼食の時は大抵別行動となる。

 およそ一週間ぶりの学食は、以前来た時と変わっていなかった。昼時になれば、それなりに混雑するし、メニューも変わっていない。強いて言えば、サンプルの置いてあるショーケース内の飾りつけだけが秋仕様から冬仕様に変わっている。ただ、そんな変わり映えしない光景でさえも、桜には何か感じるものがあった。もっとも、彼女にとって、それは何なのか分からない。

 学食に着いた桜は、さっそく食券の券売機の列に並ぶ。まだ授業が終わって間もない時間と言うこともあり、幸いにも列はそこまで伸びておらず、数分ほど待ったところで桜の順番が回ってきた。

 彼女は財布から五百円玉を取り出し、券売機に投入する。そして、ランプが点灯したのを確認したところで、少し悩んだ風の表情を浮かべる。

「よし!カツ丼」

 悩んだ末に、彼女が選んだのは大好物でもあるカツ丼。そのまま、『カツ丼』と書かれたボタンへ指を近づけていくが、不意に頭の中にある映像が浮かんでくる。それは、病院で眠り続けていたときに彼女が見た夢のワンシーン。その中で、彼女は今と同じようにボタンを押そうと指を伸ばしていた。しかし、ボタンに触れたはずの指はボタンに触れる前に通過してしまい、いくら押したところで手ごたえがない。そして、そんなことをしている間に後ろから来た別の生徒に横入りされてしまう、そんな内容だった。

 そのせいで、桜の指は若干震え始める。ただ、一度出した指を引っ込めることもできず、震えた状態のままで指をボタンに近づける。そして、ボタンと指との距離がゼロになったとき……指先に触れた感触が伝わった。

 ガコンッ!

 音と共に、取り出し口に券が現れる。券には、大きな文字で「カツ丼」と書かれており、吐き出されるとすぐにランプが消える。

「あれは夢……なんだよね」

 確認するように、つぶやく桜。すると、券売機のすぐ後ろにある窓の外に、何か白い粒のようなものが落ちてくるのが目に入る。桜は取り出し口から券を引き抜くと、慌てて窓へ近づく。

「雪だ……」

 彼女が窓から外を眺めていると、先程目にした白い粒が彼女の目の前をいくつも落ちていく。それは、冬の風物詩にして、冬の到来を告げるもの。そして、夢の中で出てきた少女と同じように、真っ白で、少し儚さを感じる、そんなものだった。

 それを見ながら、彼女は夢に出てきた少女に思いを馳せる。少女が言った言葉を忘れないために、いつの日かに再会するであろう少女に胸を張れるように……。


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