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幼い約束 Part5

 こんばんは、管理人です。昨日は更新し忘れてて、すいませんでしたwまあ、元々隔日更新の予定だったので予定通りだったとも言えますが、ひとまずマイペース更新を続けようと思います。なので、これからもよろしくお願いします。

 それでは、「幼い約束」の5話になります↓



「はぁ…」

 ここは閉鎖されたフェリー乗り場。かつては島と本土を結ぶ唯一の手段として、それなりに賑わっていた。しかし、数年前に神那島大橋ができたことに伴い、次第に縮小され、ついには閉鎖されてしまった。人の手が加えられていないため、ずいぶんと寂れてしまっているが、ここには多くの人の思い出がある。島の人の思いをのせて、本土へ旅立っていく人を見送ってきたこと、ここでたくさんの人たちが働いていたこと、そして大切な人と約束を交わしたこと。そう、ここはあの日、私とせいちゃんが約束を交わした、大切な場所である。

「ホント、何やっているんだろ、私?」

 思わず苦笑する。せいちゃんが来るのが、すでに明日に迫っているというのに。もっとも、準備の方はほとんどできているので、あとは当日、つまり明日の仕上げを残すのみという段階まで来ている。つまり、残った問題は…

「何なんだろうね、このもやもやした気持ちは。こないだまではそんなことなかったのに…」

 第一報から少しして、せいちゃんが来る日が決まったと、みこっちゃんから聞かされた。歓迎会のことを話すと、みこっちゃんも手伝うと申し出てくれた。ただ、彼女は受験生と言う立場上、この時期は大事である。なので、私がメインに進め、彼女にはその手伝いという形で協力してもらった。二人で作業している時は、あれやこれやと話が弾み、すごく楽しかった。また、みこっちゃんがいないところでも、私は「あること」の特訓を受けていた。時間があまりないということで、「先生」は厳しかったけど、それ以上にせいちゃんと会える嬉しさが上回り、頑張ることができた。その甲斐あって、下準備自体はかなり早い段階で終わり、あとは当日待つだけと、そうなっているはずだった。だけど、ここに来て、私の心は沈んでいた。

 ここに来たのは、何か理由があったわけではなかった。ただ、何となく足がこっちにむいたという話だ。いや、そうではない。むしろ、心の中を整理したかったのかもしれないと、無意識にそう考えたからだと思う。こればっかりは、久坊や春坊には相談できなかった。何せ、これは私だけの問題なのだから。

「あれ?彩…さん?」

 誰かの声が聞こえてくる。よくよく見ると、地面には小さな影が揺らめいており、誰かがそこにいた。後ろを振り向くと、そこには意外な人物の姿があった。

「みこ…っちゃん?え、ええ~!ど、どうしてこんなところに!!!」

 驚きを隠せない私。なぜなら、ここは島のかなり端の方にあり、うちからでもかなり遠い。徒歩で来れないこともないけど、それなりに時間はかかる。ましてや、生まれつき身体の弱い彼女がここに来ること自体、正直かなり身体の負担になっているはずだからである。

「帰り道、彰さんのバイクで出かける彩さんの姿を見て、それで…」

 心配になった、と彼女は言う。彼女に心配をかけたことに、私は少し申し訳ない気分になった。

「ごめんね、心配かけて。でも、何でもないから…」

 何でもないわけはなかった。未だに心の中のもやもやは晴れないし、その正体すらつかめなかった。そんな私に対し、彼女はこう言った。

「そ、その!隣、いいですか?」

「う、うん。…どうぞ!」

 反射的に返事をしてしまう私。そして、みこっちゃんは私の隣にやってきて、そこから見える風景を眺める。

「何だか、寂しい、ですね」

 景色を眺めながら、彼女は言う。寂しい、それはいろんな意味でふさわしい表現だった。

「うん。私が小さい頃は、活気もあったし、船の入りもあったんだけどね。だけど、今の状況を見ちゃうと、そんなの嘘みたいだよね」

 もちろん、私が言ったようなことはあり得ない。現に、フェリー乗り場は確かにここに存在し、そのことはたくさんの人が覚えている。だけど、覚えているのが私一人だけだとしたら、仮に島の人が全員この港のことを忘れてしまった時、私はここにそれがあったと声を大にして言えるだろうか。誰か一人しか信じない真実と、みんなが本当と信じている嘘。それを天秤に掛けられた時、私は…。

「あの。一つ、話を聞いてもらってもいいですか?」

 となりに立っているみこっちゃんが、私に尋ねる。彼女の話が何なのかは分からないが、少しでも気がまぎれるならばと、そんな軽い気持ちで了承する。

「実は私、ずっと考えていたことがあるんです?」

「考えていたこと?」

 彼女は頷いた。

「だけど、この間までそのことに気がつかなかったんです。いえ、もしかしたら忙しさにかまけて、それを忘れようとしていたのかもしれないです」

「みこっちゃん…?」

 ザワリとした感じがする。彼女の言葉を聞いて、心がざわついた。

「でも、こうして準備が終わって、後は当日を待つだけという段階に来て、ようやく気付いたんです。気がつかなければどうってことない。けど、気が付いてしまったら、もう無視することはできなかったんです」

「え…それって…」

 私は驚いた。なぜなら、それと似たような気持ちに覚えがあったからだ。

「最初はなんでそうなのか、理由が分からなかったのですが、昨日になってようやく気がついたんです。私、お兄に会うのが不安なんだ、って」

「みこっちゃ…!?」

「ほら、私とお兄って、兄妹と言っても本当の兄妹じゃないじゃないですか。それに、私がこの島に来たのはまだ小さい頃で、お兄と過ごした時間っていうのは本当にわずかな時間だったんです。だから、久しぶりに会ったお兄が、私のこと忘れてたらどうしよう、そう考えると急に怖くなって…」

「……」

 みこっちゃんの言葉に、私は何も言うことができなかった。彼女の言葉を聞いて、私は確信した。すると、そんな私を見て、気分を害したかと思ったのか、みこっちゃんは胸の前で両手を交差させる。

「あ…す、すいません!こんな話、つまらなかったですよね。ほ、他の話をしましょう!!」

「ううん。続き、聞かせてくれない?」

 少し考えた後、彼女は話を続けた。

「それで、昨日一日、ずっと考えてみたんです。そして、ようやく納得できる答えが見つかったんです」

「…答え?」

「はい。自然体でいよう、それが私の答えです」

「自然体…」

 彼女はどこか不安そうな表情を浮かべている。しかし、その目には意志がこもっていた。

「たとえお兄が覚えていようがいまいが、そんなことは関係ない。むしろ忘れているなら、思い出させるなり、初めからやり直すなり、いくらでもやりようがありますし。そう考えたら、鬱々とした気分がすっきりしました」

「…」

「この話をしたのは、いわゆる決意表明みたいなものです。誰かに聞いてもらうことで、自分の中の答えをはっきりと自覚させておきたいというわがまま。そうでもしないと、決意が鈍ってしまうくらい、私は弱いから。…って、彩さん?」

 彼女に呼ばれて、私は正気に返る。そして、もう一回彼女のことを見た。

「な、何です…?」

 何のことかわからない彼女は、訝しげに私を見ている。その一方で、私は考える。彼女は、なぜそんな風に考えることができるのだろうか。私と一つしか違わないのに、彼女はずっとしっかりしているように感じられた。そんなことを考えている内に、自分のことが情けなく感じられてきた。

「あ、あの彩さん。その、やっぱりつまらなかったですか?ご、ごめんなさい。愚痴みたいになっちゃって…」
 黙り込んでいる私の態度に、怒っていると勘違いしたのか、彼女は謝りだす。そんな彼女に対して、私は何か言葉をかけて上げようとする。しかし、何も浮かび上がってこない。

「…大丈夫。平気だから」

 やっとの思いで、その一言を絞り出す。いつも通りのつもりで言ったつもりだけど、それについては自信がない。ただ、みこっちゃんには伝わったのか、少し安堵した表情を見せる。

「さぁ、帰ろっか。送ったげる」

 私は、近くに止めてあるバイクを指さす。それは、お兄ちゃんからのお下がりのバイクだった。まだ日は高いとは言え、ここから家までは少し距離があった。故に、今から徒歩で帰ると、着いた頃には日が暮れてしまっている可能性がある。ましてや、身体の弱い彼女に長時間歩かせるのは酷だと思ったからである。

「え…。い、いや、その…だ、大丈夫です!一人でも、か、帰れますから!」

 しかし、その申し出に対し、彼女は頑ななまでに拒否しようとしていた。しかも、どこか焦りの様なものさえ見える。

「大丈夫大丈夫。遠慮しないで!!」

「いえ、そうじゃなくて、うわ!!」

 抵抗する彼女の手を取り、バイクの座席に乗せる。そして、ヘルメットを渡し、自らも被る。

「ヘルメット被ったね?よし、振り落とされないようにしっかりつかまっててね!」

「ちょ!あ、彩さ…」

 言い切らないうちに、私はバイクのエンジンをかけ、走り出した。

「ほらほら~。しっかり捕まらないと、落ちちゃうぞ~」

「お、降ろして~~~~」

 家に帰るまでの道中、みこっちゃんの悲鳴は続いていた。ようやく着いた頃には、すでにぐったりとしていたが、どうにか歩けるようで、バイクから降りてのろのろと歩いて行った。そして、彼女と別れた後、私は一人考え始める。

「そうか…。私も、不安だったのかも」
 もしも、せいちゃんが覚えてくれていなかったら、こんなことしたって無駄だもんね。歓迎会を開こうと思ったのも、せいちゃんなら、きっと覚えていてくれるはずだ、って思いこみたかったから。その気持ちは気づかなければどうってことはない。けれど、一度気が付いてしまえば、その後は…。

「自分で、見つけるしかないんだよね。答えを」

 私は家路を行きながら、ひたすらにそのことを考えるのであった。

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