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こころのたび Pat6

 こんばんは、管理人でございます。うっかり更新するのを忘れてたので、慌てて更新。


 今回の更新は、こころのたびの第6話(第7回)。つい先日の話ですが、本編の方はひとまず無事に書きあがりました。順調に行けば、あと2~3回くらいでまとまるかと。なので、急いで次の作品に取りかからないとなのですが、別のところが死活問題とかワロエナイww↓




3.
 夕方になると、明るかったはずの空はあっという間に闇に染まる。それに伴い、町並みも闇に染められ、それを和らげるために電灯が点灯し始める。そんな様子を、桜とモモ、ダニエルの三人は鉄塔に腰かけて眺めている。

「もう、いいかな?」

 不意に桜が呟く。その言葉に、モモはすかさず反応する。

「何のこと?」

「私を連れていくって話。未練なんて感じたってしょうがないって、分かったから」

 自嘲するような笑みを浮かべる桜。その姿は、昼間よりもさらに薄く、透明になっている。例えるならば、強風に晒された蝋燭の火。もう一押し、何かきっかけがあればすぐに消えてしまう、そう思えるくらいの希薄さを漂わせている。しかし、モモはそれに対して何も言わず、桜の言葉を待つ。

「たった十数年の人生だったけど、それでもきっと誰かに影響を与えてたと思ってたの。でも、実際にはそんなことはなかった……親も友達も、私がいなくなったところで何も変わらない。だから、私が飛び降りたのもきっと間違ってなかった、そう思えるようになったの」

 その言葉と共に、ますます姿が希薄になる桜。すると、今度はモモの方が口を開いた。

「普通、そういうことって飛び降りる前に気付くものなんだけどね。飛び降りてからそんなことを言ったの、多分桜ちゃんが初めてだと思う」

 そう言って、モモはかすかに笑みを浮かべる。しかし、モモは「でも」と、言葉を繋ぐ。

「間違ってなかった、と決めるのはまだ早いんじゃないかな?もう少し、見てみようよ」

 モモは腰を浮かすと、その場で浮かんで見せる。そして、右手を目の前に座っている桜へと差し出す。桜は、その手を取るべきか否か、一瞬迷ったような表情を浮かべたが、最終的にはおずおずとその手を取ることにした。


 彼女たちが最初に向かったのは、昼間も訪れた桜の家。昼間同様、窓から家の中へ入ると、桜の母親とあやめ、それと昼間は家を空けていた桜の父が居間に揃っていた。

「いただきます」

 ちょうど夕食時だったのか、テーブルには食器に盛りつけられた料理が並んでいる。あやめの言葉を合図に、そこにいる全員が箸を取るが、一つだけ違和感があった。それは、器の数。現在テーブルについているのは三人であり、普通に考えれば人数分の器と料理があれば事足りるはずである。しかし、そうではなかった。

「私の分も……ある?」

 テーブルには、三人分の器と料理に加え、もう一人分の用意がされていた。器に盛り付けられた料理は他の三人と同じものであり、また出来たてだと言わんばかりに湯気が残っている。

「ん、おいしい」

 器から料理を口に運んだあやめが、一言。ただ、その言葉とは裏腹に不満そうな表情が見え隠れしている。

「でも、毎日カツ丼はもう飽きた!」

 あやめの言葉を聞いて、彼女の母親は申し訳なさそうな表情を浮かべる。しかし、彼女の母親の答えは決まっていた。

「ごめんね、あやめ。でも、こうしていれば、あの子が無事に戻ってくるんじゃないかと考えるとどうしても、ね」

 彼女の母親はそう言いながら、誰も座っていない椅子に目をやる。そこは、かつて桜が座っていたはずの場所だった。

「うむ。お父さんも、このままでいいと思うぞ」

 母親の言葉に同調するように、彼女の父親も言葉を重ねる。それを知って、さすがにあやめもつぐむ。ただ、「せめて中の具だけは変えてほしい」とそう一言付け加える。

「カツ丼、好きなんだね?」

 その光景を見ていたモモは、隣にいる桜に問いかける。

「うん、大好物……」

 すかさず桜は答えるが、言葉に勢いはなかった。というよりも、どこか戸惑いを感じているように見える。呼び鈴の音が家の中に響いたのは、まさにそんな時だった。

「この時間に誰かしら……?ちょっと行ってくるわ」

 そう言って、母親は席を外し、玄関へと歩いてく。桜たちもそれに続くように、居間を後にする。

「はいどちらさま……松本君?」

 玄関に辿り着き、ドアを開けた先に待っていたのは松本だった。昼間見た通りの制服姿の彼は、ポケットから何かを取りだす。

「これを……。録音してきましたので」

 取りだしたのは、何かのディスク。表面には何も書かれていないため、一見しただけでは何なのかは分からない。しかし、母親は心当たりがあるのか、それを受け取り、こう言った。

「ありがとう。さっそくあの子に聞かせてあげないと……」

「いえ。以前からの桜さんとの約束でしたので」

 彼女の言葉に答える松本の表情は、どこか暗いものが感じられる。少なくとも、昼間桜が感じ取ったものとは全く異なるものであるのはひしひしと感じられる。

「松本君、あなたが気に病む必要はないの。もしあの子のことが重荷になるんだったら、その時は……」

「いえ、僕の方は大丈夫ですから。それではこれで……」

 そう言って、松本は扉に背を向け、歩いてきた道を逆に歩きはじめる。その背中を、桜は追いかける。

「約束、覚えててくれたんだ」

 ポツリと漏れた言葉と共に、彼女の頭の中にビジョンが浮かぶ。それは、いつかの音楽室でのやりとり。顔を真っ赤にし、勇気を振り絞って、彼女はこう言った、今度ピアノの演奏を録音させてほしいと。こんな状況になってしまったため、その約束は果たされないものだと彼女は思っていたが、松本は約束を果たしたのだ。

「……」

 一連のやりとりを思い起こしている内に、桜の心に異変が起こる。今はまだ微細なものに過ぎないが、思考の綻びのようなものが浮かび上がっている、そのような違和感を感じ始めたのだ。そんな彼女に対し、隣にいるモモは彼女の手を握り、そのまま別の場所へと誘っていく。


 次にやってきたのは、町にある予備校。桜は通っていないが、彼女の通う学校の生徒の多くがここに通っている。そして、彼女が窓から建物の中を覗き込むと、見知った顔を見つける。

「みゆきに佐和子……二人とも何してるんだろ?」

 教室の様子を見るに、今は丁度授業が終わったところで、次の授業の待ち時間と言ったところだろうか。その証拠に、黒板には図形やら文字が描かれたままであり、また鞄を机の上に置いた状態での空席が目立つ。そんな状況の中、みゆきと佐和子の二人は机に向かって、何やら作業をしていた。ただ、桜が現在いる位置からはそれが何なのか分からない。

「中、入ろうか」

 そんなモモの言葉に頷き、彼女は窓をすり抜ける。そのままゆっくりと二人の元へ近づくと、ようやく謎が氷解する。

「折り紙?でもなんで……」

 二人が行っていたのは、折り紙。二人の座っている席の上には色とりどりの紙が散らばっており、その内のいくつかは元の形から変形して、鶴の形をとっている。と、そんな様子を見ている桜の目の前で、みゆきの肘に鶴の折り紙が激突する。紙は衝撃で机の上から転がり落ち、床へ落下していく。

「おっと!!」

 しかし、床に落ちる直前で動きは止まる。そして、すぐさま机の上へと引き戻された。

「ほら、みゆき。落としたわよ」

 鶴を机に戻しながら、佐和子が言う。それに対し、みゆきは少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「ごめん。助かった」

「いいって。それより、そっちは今どんな感じ?」

 佐和子は話題を変えながら、みゆきの机の上と、上に載ってる紙袋に目をやる。紙袋の中に入ってるのは、机の上に並んでるものと同じく、折り紙で作った鶴。量としては紙袋の四分の三ほどが埋まっている程度。それを上から眺めているダニエルは「うわぁ」と言う言葉を漏らす。

「結構出来てるね。これなら、今日中にいけるかも」

 紙袋の中身と机の上を見比べた上で、佐和子はそう評した。しかし、その言葉を言った途端、彼女の表情が曇った。

「うん。どうにか間にあいそうでよかった……」

 すると、佐和子の言葉を聞いたみゆきもまた、表情を曇らせる。二人の顔に浮かんだのは、今にも泣きそうなくらいに辛そうな表情だった。

「だって、桜のためだもん。戻ってきたら、しこたま文句言ってやるんだから…うっ」

 佐和子の言葉は、これ以上続かなかった。言い終わると共に涙があふれ出し、喉をしゃくりあげるように嗚咽したからである。みゆきは、そんな彼女の肩を抱き、自身も涙を流す。そして、その光景を見た桜の口から言葉が漏れだす。

「どう、して?私のためって、一体どういう……?」

 瞬間、桜の思考の綻びは綻び始める。その結果、綻びから色々なものが溢れだしてくる。諦め、という名目の元で押し込めてきたもの、偽りの答えに塗りつぶされていた本当の思い、それらが一気に解放され、桜の心の中にフィードバックしていく。そして、そこから彼女は自身の答えを選び取った……。


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